血液検査 肝臓・細胞障害関連

①AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ) 
肝臓逸脱酵素。
・ASTは心筋、肝臓、脳で高濃度で、次いで骨格筋、腎臓に多く含まれる。
・ALTは肝細胞内にに含まれ細胞破壊がみられれば上昇する。
ASTは肝疾患以外でも上昇するが、ALTは心筋梗塞などの筋肉疾患では上昇はしない。

そのためAST/ALT比で疾患を鑑別することができる、

  • AST/ALT比<1(ASTが小さい):慢性・急性肝疾患、脂肪肝、肝硬変初期、胆汁うっ滞など
  • AST/ALT比>1(ASTが大きい):劇症肝炎、アルコール性脂肪肝or肝炎、進行肝硬変、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞
  • AST/ALT比>2(ASTが2倍以上):原発性肝癌、筋ジストロフィー



2)総ビリルビン(T-Bill) 肝細胞機能・胆道の指標
寿命がきた赤血球破壊により生じる分解産物。
総ビリルビンT-Bil:0.3~1.2mg/dL
直接型ビリルビンD-Bil:0.1~0.5mg/dL
間接型ビリルビン 0.0~0.8mg/dl
➀肝前性黄疸(溶血性黄疸)では肝機能異常はなくHbの破壊速度が速いため黄疸が出現する。間節型ビリルビンのみ上昇。
②肝細胞性黄疸では肝機能が低下しBiillがたまっている状態。直接・間接ともに上昇する
→AST,ATLも上昇。
③肝後性黄疸(閉塞性黄疸)肝機能異常はなく胆石や癌によって胆道閉塞が起こっている状態。直接型ビリルビンが上昇する。
→ALP、γ-GTPも上昇。
便秘はビリルビンの再吸収を促進させるため注意。制限がないかぎり水分摂取をすすめ、尿量増加に努めて、ビリルビンの排出を促す。



③ALP(アルカリホスファターゼ)
広く全身に分布するが血清中に存在するALPのほとんどは肝臓型または骨型のALPである。ALP濃度が上昇する場合は、臓器の壊死や破壊に伴う修復活動として細胞再生が行われており、これに伴ってALPの合成亢進が行われ、血中への放出が進んだものと考えられる


ASTやALTの上昇があまり見られないにもかかわらずALP値が上昇している場合には胆汁のうっ滞の可能性が高く、黄疸などを発症する場合が多い。


肝臓や骨に癌がある場合もALPは上昇する。
ALPが高値を示した場合、アイソザイムを特定することにより由来臓器を推定し、診断に役立てることも可能である。 異常低値の場合は亜鉛の欠乏も鑑別に上がる。


高値:
骨疾患(クル病、悪性骨腫瘍、副甲状腺機能亢進症)
肝胆道疾患、肝疾患
低値:甲状腺機能低下、壊血病
ALPは6つのアイソザイムがある
ALP1:肝臓
ALP2:肝臓、胆道
ALP3:骨メタ
ALP4:妊娠後期
ALP5:小腸疾患
ALP6:潰瘍性大腸炎


4)γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)
γ-GTPは肝臓の解毒作用に関係。肝臓や胆管の細胞がこわれると血液中にγ-GTPが血液の中に流れ出てくることから、逸脱酵素といわれます。γ-GTPが高くなる疾患には、肝臓の細胞が破壊される肝炎、脂肪肝、胆石や胆道がんなどで胆道がつまった場合にも高くなります。
基準値:12~49IU/I
高値:肝疾患、胆道疾患、アルコール摂取


5)LDH(乳酸逸脱酵素)
LDHは肝臓、赤血球、筋肉、悪性腫瘍などにあります。したがって、LDHが上がる病気には、肝臓疾患、血液疾患、心疾患、がんの場合などがあります。
悪性リンパ腫や白血病では、600から数千まで顕著に上がります。
筋肉が大量に破壊される筋ジストロフィーなどでも同じくらい上がります。
心筋梗塞や慢性肝炎では、400から600くらいの中等度に上がります。
血液にも含まれているため採決時に溶血すると高地をしめす
またアイソザイムが5種類。
LDH1 正常値25~35% 心臓、腎臓、赤血球
LDH2 正常値35~40% 心臓、腎臓、赤血球
LDH3 正常値24~28% 肺、肝臓、骨 
LDH4 正常値2~7%  肝、副腎、甲状腺
LDH5 正常値2~5%  肝、副腎、甲状腺


6)NH3
蛋白質は大腸内の最近によって分解されアンモニアを生じる。これは腸管より吸収されたのちに肝臓で代謝され、尿素となり尿中へ排出される。
基準値:40~80μg/dl
高値:肝機能低下による代謝不全。肝性昏睡を起こす。
便秘はアンモニアの生成や吸収を促進するため排便コントロールが必要。
ラクツロースシロップは腸管運動の亢進と腸管内のpHを酸性化し、アンモニアの産生や吸収を阻害する。


7)ChE
コリンエステラーゼは神経・筋の指示伝達に関与するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)と偽性に大別される。偽性の生理的意義は不明。
血中ChEは偽性由来である。肝臓のタンパク合成能を反映するマーカーとなっている。
半減期は2週間のため急性期の重症度評価には用いられない。
基準値:242~495U/L(男性) 200~459U/L(女性)
高値:過栄養、甲状腺機能亢進、ネフローゼ
低albを伴う高ChEの場合、高脂血症があればネフローゼなければ甲状腺機能亢進。
低値:低栄養、肝障害、
サリン中毒、農薬中毒などの有機リン中毒では、ChEは顕著に低値を示す。