化学療法 FOLFIRI±Cmab/Pmab

FOLFIRI±Cmab/Pmab(フォルフィリ±セツキシマブ/パニツムマブ)療法
適応
大腸がんの標準的療法。14日(2週) Cmab/PmabはKRAS遺伝子野生型の患者に投与。


※KRAS遺伝子とは:がん細胞の増殖をコントロールしている遺伝子のこと。KRAS遺伝子が野生型の場合に抗EGFR抗体薬(Cmab/Pmab)の効果が期待できるが、変異型の場合は他の薬剤の使用が良い。方法は手術や内視鏡による生体組織診断。


催吐性リスク 中等度


スケジュール 
+Cmab 1日目4.5h 2日目3.5h 8日目1.5h
+Pmab 1日目3.5h


●パロノセトロン(アロキシ) 0.75mg/15分  5-HT3受容体拮抗型制吐剤

効能効果
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状、化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防


注意
本剤の消失半減期は約40時間であり、短期間に反復投与を行うと過度に血中濃度が上昇するおそれがあるため短期間での反復投与は避けること。
本剤の投与により消化管運動の低下があらわれることがあるので、消化管通過障害の症状のある患者は、本剤投与後観察を十分に行うこと。


遅発性悪心嘔吐の抑制効果については、グラニセトロンよりも優れているとの結果が出ている。


●デキサメタゾン(デカドロン) 1日目13.2mg 8日目6.6mg

効果
抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)
インフュージョンリアクションの予防


●d-クロルフェニラミン(ポララミン) 5mg 抗ヒスタミン剤

禁忌:緑内障、前立腺肥大
インフュージョンリアクションの予防
 Cmabでない場合はポララミンの投与は不要


●セツキシマブCmab(アービタックス) 分子標的薬 抗EGFR抗体薬 非炎症性抗癌剤

効能又は効果
EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌、頭頸部癌


用法容量
1日目400mg/m2/2h、2回目以降250mg/m2/1h(8日目に投与)
注意
本剤投与時にあらわれることがあるinfusion reactionを軽減させるため、本剤の投与前に抗ヒスタミン剤の前投薬を行うこと。さらに、本剤投与前に副腎皮質ホルモン剤を投与すると、infusion reactionが軽減されることがある。
間質性肺炎既往があれば憎悪のリスクがある。
副作用
IR、骨髄抑制、下痢、心不全、電解質異常
皮膚症状(開始後1~4週間に80%):吹き出物、発赤、乾燥、爪囲炎、ざ瘡 
対策:保湿、ミノマイシンの予防投与、スパイラルテーピング(爪囲炎)、ステロイド軟膏
徐々に軽快していく。


○パニツムマブ Pmab(ベクティビックス) 分子標的薬 抗EGFR抗体薬 非壊死性抗癌剤
 Cmabでない場合はポララミンの投与は不要

効能効果
KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌


ヒト型完全モノクローナル抗体である点が大きな特徴である。セツキシマブはヒト・マウスのキメラ抗体であり、このためセツキシマブに比べてアレルギー機序による副作用が軽減されている。


用法容量
成人には2週間に1回パニツムマブとして1回6mg/kg(体重)を60分以上かけて点滴静注する。
本剤は,タンパク性微粒子を認めることがあるためインラインフィルター(0.2又は0.22ミクロン)を用いて投与すること。
本剤は,60分以上かけて点滴静注すること。ただし,1回投与量として1,000mgを超える場合は,90分以上かけて点滴静注すること。


注意
低マグネシウム血症,低カリウム血症及び低カルシウム血症があらわれることがあるので,本剤投与開始前,また,本剤投与中及び投与終了後も血清中電解質(マグネシウム,カリウム及びカルシウム)をモニタリングすること


副作用
重度の皮膚障害、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
間質性肺疾患、重度のInfusion reaction、下痢(1%未満)、低マグネシウム血症
皮膚障害対策:保湿、ミノマイシンの予防投与、スパイラルテーピング(爪囲炎)、ステロイド軟膏 徐々に軽快していく。(Cmabより皮膚障害生じやすい)


●IRI:イリノテカン(CPT-11:カンプト) 炎症性抗癌剤

禁忌:腸管麻痺,腸閉塞のある患者
用法・用量
A~E法。添付文書参照。150mg/m2/1.5h
レボホリナートと同時投与する


副作用
骨髄抑制、消化器症状(催吐性:中等度)40%以上
コリン作動性症状(下痢、発汗、悪心・嘔吐)
高度な下痢(50%以上)
早発型:本剤投与中あるいは投与直後に発現する。コリン作動性と考えられ,高度である場合もあるが多くは一過性であり,副交感神経遮断剤(アトロピン),抗コリン薬(ブスコパン)の投与により緩和することがある。
遅発型:本剤投与後24時間以降に発現する。主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ,持続することがある。


消化器症状に対してはメトクロプラミド、アルプラゾラム、オランザピンの投与
遅発性下痢に対してはロペラミド塩酸塩等の止瀉剤の投与。※便秘になるとイリノテカンが排出されず骨髄抑制が増強するので排便コントロール必要
脱水を認めた場合には,輸液,電解質補充。
重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には,適切な抗生剤の投与。
高度な下痢や嘔吐に伴いショックがあらわれることがあるので,観察を十分に行い,呼吸困難,血圧低下等が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。


●FOL(フォリン酸):レボホリナート(アイソボリン:l-LV) 

イリノテカン(CPT-11:カンプト)と同時投与
併用注意:ワーファリン、フェニトイン
ビタミンの一 種でに抗がん作用はない。5-FUの働きを高める作用 がある。


●F:フルオウラシル(5-FU) 炎症性抗がん剤

400mg/m2を5分間で急速投与後にインフューザーポンプを用いて2400mg/m2を46時間かけて投与する。
注意:ワーファリンカリウムと併用注意 抗凝固機能の変動注意
副作用:下痢、悪心・嘔吐・食欲不振、好中球減少(49%)、口腔内粘膜炎、手足症候群
消化管粘膜障害


手足症候群:手・足裏のちくちく、ぴりぴり感。予防的保湿ケアが大切
口腔内粘膜炎:口腔内乾燥にはうがい薬、痛みにはアセトアミノフェン、栄養補助食品等


→スキンケア、マウスケアが大切。


●デキサメタゾン(デカドロン) 8mg/日
投与翌日から二日間内服