高カリウム血症の鑑別と治療

●血清カリウム(K)
基準値:3.5~5.0mEq/L


高カリウム血症の症状

  • P波消失、徐脈化
  • テント状T波、wide QRS
  • VF
  • 四肢のしびれ
  • 筋力低下(K >7 mEq/L)

緊急性がある場合

  • 心停止 → ACLS
  • K 6.0mEq/L以上、P波消失、徐脈化 → カルチコール投与、K補正


緊急性が無い場合の鑑別
  1. K>5mEq/L場合
  2. 偽性高K血症を除外(採血時の溶血)  ※PLT60万以上の場合は溶血の可能性が高い
  3. 偽性除外できればTTKGを計算する
  4. TTKG>7なら腎排泄正常、 TTKG<7なら腎排泄障害


TTKG(TransTubular K gradient)計算式
=(尿中K濃度×血液浸透圧) / (血中K濃度×尿浸透圧) ※尿浸透圧>血液浸透圧の時のみ成立 

  • TTKG>7なら腎排泄正常 ①K負荷(横紋筋融解症、組織損傷 ②細胞内→外への移動(アシドーシス、インスリン欠乏)
  • TTKG<7なら腎排泄障害 腎機能障害、尿細管アシドーシス、副腎不全、RAS阻害薬、スピロノラクトン内服



治療
●グルコン酸Ca(カルチコール)

  • 心筋細胞の興奮を抑制して不整脈を予防
  • カリウム低下する作用はない
  • 投与方法 カルチコール8.5% 10ml 850mgを3〜5分かけて静注
  • 効果がなければ10〜20分後に再投与可
  • 作用発現数分、作用持続時間30〜60分
  • 緊急時最初に用いる

●GI療法(グルコース/インスリン療法)

  • インスリンの作用によりカリウムを細胞外から細胞内へ移動させる
  • ほとんどの高カリウムを一時的に是正可能
  • 投与方法①ヒューマリン10単位+50%TZ50ml 静脈注射
  • 投与方法②ヒューマリン10単位+10%TZ250ml or 5%TZ500ml 一時間で投与
  • 低血糖のリスクがあるので1時間後に血糖測定を行う
  • 作用発現15〜30分、作用持続時間4〜6時間

●輸液+フロセミド

  • 尿細管におけるカリウムの最吸収を阻害し体外へ排泄
  • フロセミド20〜80mgを静脈注射
  • 作用発現1〜2時間、作用持続時間6時間  

●イオン交換樹脂

  • 腸管でのKを吸着させ、吸収を抑制する
  • 商品名はアーガメイトゼリー、カリメート、ケイキサレート
  • 15〜30g/日 分3
  • 緊急時には適さない CKDなどに用いられる

●血液透析

  • 迅速かつ確実にカリウムを体外へ排泄できる
  • ブラッドアクセスが必要
  • 緊急性の高い進行性高カリウム血症、横紋筋融解症や組織損傷、腫瘍崩壊症候群

その他

  • メイロン:重炭酸が入っているため、細胞にカリウムが取り込まれる


主な輸液製剤のK濃度
・KCL補正液        K+20mEq/20mL→(1000mEq/L)
・エルネオパNF2号     K+27mEq/L
・エルネオパNF1号     K+22mEq/L
・KNMG3号         K+20mEq/L
・ソルデム3A、ビーフリード K+ 20mEq/L
・アクチット        K+17mEq/L
・ソルアセトF        K+ 4mEq/L
・ラクテックG          K+ 4 mEq/L
・生理食塩水          K+0mEq/L
・ソルデム1         K+0mEq/L
・5%ブドウ糖液        K+ 0mEq/L


Na  1mEq=1mmol
K  1mEq=1mmol
Cl 1mEq=1mmol
Ca 1mEq=0.5mmol