ウィーニング

人工呼吸器からの離脱を行い患者自身の呼吸へと切り替えていく過程。
自発覚醒トライアル→自発呼吸トライアル→抜管の流れで進む。
抜管失敗は全抜管患者の2~25%に発生し、抜管失敗による再挿管は肺炎合併率や死亡率の上昇と関連する。


1)自発覚醒トライアル(SAT)
・鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるかどうかを評価する
・麻薬や鎮痛剤はそのまま継続。
・鎮静剤を中止してから30分〜4時間程度を目安に評価する。
・覚醒の程度はRASSを用いる。


●SAT開始安全基準
以下の事項に該当しない
・興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
・筋弛緩薬を使用している
・24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
・痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
・頭蓋内圧の上昇
・医師の判断


●SAT成功基準
①②ともにクリアできた場合を「成功」
①RASS:-1~0
②鎮静薬を中止して30分以上過ぎても次の状態とならない
・興奮状態
・持続的な不安状態
・鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない
・頻呼吸(呼吸数35回/分、5分間以上)
・Sp02く90%が持続し対応が必要
・新たな不整脈


2)自発呼吸トライアル SBT
人工呼吸器による補助がない状態に患者さんがたえられるかどうかを確認する試験。
開始安全基準を満たせばCPAPやTピースに変更し、その30分〜2時間観察しSBT成功基準を満たせば抜管に至る。
呼吸器離脱時は胸腔内圧陰圧による心不全、肺水腫に注意


●SBT開始安全基準
①〜⑤をすべてクリアした場合「SBT 実施可能」
①酸素化が十分である
・Fi02 0.5かつ PEEP 8cmH20のもとでSpO2 > 90%
②血行動態が安定している
・急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない
・心拍数140bpm以下
・昇圧薬の使用について少量は許容す
 DOA≦ 5ug/kg/min、DOB≦5μg/kg/min、NAD 0.05 ug/kg/min
③十分な吸気努力がある
・1回換気量>5mL/kg
・分時換気量<15L/分
・Rapid shallow breathing index (1分間の呼吸回数/1回換気量L)< 105/min/L
・呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
④異常呼吸パターンを認めない
・呼吸補助筋の過剰な使用がない
・シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
⑤全身状態が安定している
・発熱がない
・重篤な電解質異常がない
・重篤な貧血を認めない
・重篤な体液過剰を認めない


●STB成功基準
・呼吸数<30回/分
・開始前と比べて明らかな低下がない(たとえばSpO2≧94%、Pa02 ≧70mmHg)
・心拍数く140bpm、新たな不整振や心筋虚血の微候を認めない
・過度の血圧上昇を認めない
以下の呼吸促追の微候を認めない(SBT前の状態と比較する)
・呼吸補助筋の過剰な使用がない
・シーソー呼吸(奇異性呼吸)
・冷汗
・重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態



3)抜管
SAT,SBT成功後は抜管を行う。48時間の長期挿管、女性、大口径チューブ、挿管困難、外傷症例などの場合は抜管後上気道狭窄に注意する。(30分以内に発症、低リスクでも再挿管の準備はしておく)ステロイド投与で改善するケースも有る。


●再挿管の危険因子についての評価
1)超高リスク群:主に上気道に問題があり抜管直後の再挿管を想定する場合
・喉頭〜上気道の浮腫残存が否定できない場合や、気道アクセス制限、気道確保困難症などが含まれる。
上気道(口鼻耳咽喉部)手術術後、頸部手術術後、両側反回神経麻痺、開口困難、頸椎術後頸部伸展困難、短頸、小顎、挿管困難の既往歴、カフリークテスト陽性など


2)高リスク群:抜管後呼吸不全が徐々に進行し再挿管が危惧される場合
・気道分泌物クリアランスの低下、呼吸筋疲労、PEEP依存などが含まれる
・COPD、慢性呼吸不全、気管支炎、低栄養、肥満、水分過多など
低リスク群:上記のどのリスクもない場
ただちに抜管可能と判断される。



●ウィニングの呼吸器設定
酸素化:fio2を下げる、PEEPを下げる
換気:補助換気、強制換気回数を減らす PS圧を下げる 
自発呼吸での管理時間を延ばす


ウィニングとともに呼吸仕事量は増えるためSPO2が高地であっても努力呼吸・頻呼吸があれば中断する。