抗MRSA薬

グリコペプチド系抗菌薬 殺菌性抗菌薬 AUC/MIC
● バンコマイシン(バンコマイシン®)VCM 


MRSA専用。経口剤はクロストリジウムによる偽膜性腸炎にもつかえる。


主な適応
 ・経験的治療においてMRSAや E. faecium をカバーする場合 
・市中発症の髄膜炎の経験的治療で肺炎球菌を確実にカバーする場合 
・中心ライン関連血流感染の経験的治療 


標準的投与量
 15~20mg/kg 12時間毎。60分以上かけて点滴静注
重症例ではローディングとして25~30mg/kgを考慮。
経口VCMはC. difficile 感染症のみ適応。一日4回。


注意点
・腎毒性がある薬物の併用注意(アミノグリコシド系、フロセミド、NSAIDs)
・アミノグリコシド系との併用で難聴の可能性
・MSSAなどは βラクタム系より治療成績が劣るため使用しない。 
・Red man syndrome(頭頸部や体幹の紅斑性充血)血圧低下を避けるため、1000mg当たり1時間以上 かけて投与することが望ましい。
→中止後20分で改善しない場合は抗ヒスタミン薬を投与。次回から投与速度を遅らせて再投与可能。

 ・MRSAにおいてMIC≧4は他剤を使用、MIC=2も重症例では他剤の使用を考慮する。


● テイコプラニン(タゴシッド)TEIC 

バンコマイシンより腎毒性が起きにくい。


主な適応
 ・経験的治療においてMRSAや E. faecium をカバーする場合 
・中心ライン関連血流感染の経験的治療 


投与方法
 1日目12mg/kg 2回。2日目、3日目12mg/kg 1回。
4日目以降6.7mg/kg 24時間毎 。30分以上かけて点滴静注


注意点
・MSSAなどでは βラクタム系より治療成績が劣るため使用しない。
 ・バンコマイシンと異なり髄液移行が悪いので髄膜炎には使用できない
 ・バンコマイシンで薬剤熱や薬疹が見られた場合、本剤でも見られることがある。


オキサゾリジノン系抗菌薬 濃度依存性静菌性抗菌薬
●リネゾリド(ザイボックス錠、ザイボックス®注)LZD

主な抗菌スペクトラム 
VRE 
・MRSA


主な適応 
・VRE感染症
 ・MRSA感染症において、他の抗MRSA薬が使用できない場合


投与方法
 600mg 12時間毎経口でも静注でも同様40kg以上で適応
 40kg未満の場合 15mg/kg 12時間毎。30分〜2時間かけて点滴静注
腎障害時の投与量  調整不要


注意点
・2週間を超える長期使用においては、血小板減少(骨髄抑制)が高頻度で発症する。
・消化器症状を認めやすい。
・腎障害はリスク因子で あるが、腎障害時も減量しない点は注意が必要である。 
・不可逆性の末梢神経障害が起きることもある。 
・SSRIや他のセロトニン作用を増強させる薬剤との併用でセロトニン症候群のリスクが上昇するので、原則併用を避ける。 
静菌的薬剤であり、菌血症の場合は他剤を使用した方が無難。
・投与は、バッグの青色ポートより行い、白色ポートは使用しないこと。


次の薬剤と配合禁忌である。
アムホテリシンB、塩酸クロルプロマジン、ジアゼパム、イセチオン酸ペンタミジン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、フェニトインナトリウム、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、セフトリアキソンナトリウム。


リポペプチド系抗菌薬 濃度依存性静菌性抗菌薬
●ダプトマイシン(キュビシン)DAP


VREや一部のMRSA感染症で使用されることがある
主な抗菌スペクトラム 
VRE 
・MRSA


主な適応
 ・VRE感染症
 ・MRSA感染症(菌血症、心内膜炎など)において、バンコマイシンやテイコプラニンが使用 できない場合
※左心系感染性心内膜炎に対する本剤の有効性は認められていないため、右心系感染性心内膜炎のみに投与


投与方法
6mg/kg 24時間毎  
重症例などでは最大12mg/kg 24時間毎まで報告があり、安全性/有効性が確認されている
30分かけて点滴静注又は緩徐に静脈内注射


注意点
 ・CPKが上昇することがあるので、定期的なモニタリングが必要。スタチンとの併用は避ける。 
・VCM耐性菌の場合、交叉耐性を有することがある。
 ・肺のサーファクタントで失活するため肺炎では使用できない。 
・髄液移行が悪いので、髄膜炎でも使用できない。
・本剤は、血液透析又は腹膜透析により体内から緩やかに除去される。
・横紋筋融解症に注意