その他抗菌薬

●クリンダマイシン(ダラシン注、ダラシンカプセル)CLDM 静菌性抗菌薬

リンコマイシン系抗菌薬。嫌気性菌(横隔膜より上)に対してよく用いられる。


主な抗菌スペクトラム  
・横隔膜の上と下の嫌気性菌  
・黄色ブドウ球菌(MSSA、MRSA)  
・肺炎球菌以外のレンサ球菌


主な適応  
・溶連菌による扁桃炎でβラクタム系が使用できない場合の代替薬  
・誤嚥性肺炎  ・皮膚軟部組織感染でβラクタム系が使用できない場合  
・腹腔内感染症でセファロスポリン系などと併用して  
・壊死性菌膜炎や毒素性ショック症候群でβラクタム系などと併用して


投与方法
静注600mg 1日3回。内服300mg 1日3回
30分〜1時間かけて投与


注意点
C. difficile 感染を含む下痢を起こしやすい  
・筋弛緩薬の作用を増強させることがある  
・併用禁忌 エリスロマイシン
・内服薬は食道に停留すると、稀に食道潰瘍を起こすことがある。 


● メトロニダゾール(内服:フラジール®、静注:アネメトロ®)MNZ


ニトロイミダゾール系抗菌薬。横隔膜下の嫌気性菌への活性に優れている
濃度依存性殺菌性抗菌薬


主な抗菌スペクトラム 
・嫌気性グラム陰性桿菌(バクテロイデス、プレボテラなど横隔膜の上下) 
・嫌気性グラム陽性菌( C. difficile ほかクロストリジウム、他の偏性嫌気性菌) 
・赤痢アメーバ、ジアルジア、トリコモナスなどの原虫 
・ヘリコバクター・ピロリ(多剤併用のパックを使用する)
・(放線菌、ビフィズス菌、乳酸菌、レンサ球菌には無効)
・膿瘍


主な適応 
・ C. difficile 感染(ただし治癒率は70%台との報告も複数あり)
 ・腹腔内の混合感染の併用療法として(もう1剤はセファロスポリンなど)
 ・原虫感染症(赤痢アメーバ、膣トリコモナス)
 ・ピロリ菌二次除菌の併用療法の1剤(パック使用)


投与方法
 500㎎ 1日3回(または8時間毎)。
 50kg未満の患者では30mg/kg/dayを分2~分4で(小児での投与量を参考にした)
20分以上かけて点滴静注


注意点
・ワーファリンの作用を増強するので、凝固能のモニタリングを要する。
・中枢神経系異常、味覚異常、消化器症状が生じやすい
・禁忌 脳、脊髄に器質的疾患のある患者(化膿性髄膜炎及び脳膿瘍の患者を除く)


●ST合剤(内服:バクタ®、バクトラミン® 静注:バクトラミン®)ST


葉酸合成阻害薬。スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤  
1錠、1瓶あたり、スルファメトキサゾール400㎎、トリメトプリム80㎎を含有。
ニューモシスチス肺炎、トキソプラズマの1st choice。

主な抗菌スペクトラム 

・感受性のある黄色ブドウ球菌(MSSA、MRSA共に)
肺炎球菌 大腸菌
エンテロバクターなど多くの腸内細菌 
リステリア、サルモネラ、レジオネラ、ノカルジア S. maltophlia 、 B. cepacia など一部のブドウ糖非発酵菌 P. jirovecii (ニューモシスチス肺炎)


主な適応
 ニューモシスチス肺炎の治療と予防 
軽症の皮膚軟部組織感染の経験的治療でMRSAをカバーする時 
医療曝露のある患者の膀胱炎、
急性腎盂腎炎のスイッチ療法

標準的投与量 

体重毎の投与量は全て、トリメトプリムの用量 尿路感染、
皮膚軟部組織感染:5mg/kg 1日2回(およそ4錠分2) 
ニューモシスチス肺炎の治療:5mg/kg 1日3~4回
点滴静注は1~2時間かけて点滴静注


注意点 
・基本的な抗菌作用が弱く、ニューモシスチス肺炎を除き重症例で初期から使用しない 
・軽度クレアチニンの上昇(10~20%程度)は尿細管からの排泄量の低下によるもので、真の腎 障害ではなく、薬剤中止後に回復する。 
・高カリウム血症、ワーファリンの作用増強にも注意が必要。 
・耐性腸内細菌における感受性率は地域ごとに異なるので確認が必要