抗凝固薬

●ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬(Ⅱ・Ⅸ・Ⅶ・Ⅹ)
ビタミンKに対する拮抗作用により抗凝固作用をもつ]。効果が最大になるまでに投与を開始してから48〜72時間かかる。即効性を求めるならばヘパリンの併用が望ましい。定期的にプロトロンビン時間を測定する必要がある。効果消失にも4~5日かかる。
内視鏡検査・生検・血管内手術等では中止せずに行う場合もある。


ワルファリンカリウム(ワーファリン)

錠:0.5mg、1mg、5mg


警告
カペシタビン(ゼローダ)との併用
禁忌
出血している患者
重篤な肝障害・腎障害のある患者


効能効果
血栓塞栓症の治療及び予防


用法用量
ワルファリンカリウムとして、通常1〜5mg1日1回である。
血液凝固能検査の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である。
抗凝固効果の発現を急ぐ場合には、初回投与時ヘパリン等の併用を考慮する。
血栓塞栓症の第一選択薬。併用薬に強く影響されるので注意が必要。
Afの場合、PT-INR2.0~3.0が目標。70歳以上では1.6~2.6程度。3以上であれば数日休薬する。
納豆、青汁などの摂取注意。(ビタミンK由来)


併用禁忌
・メナテトレノン(グラケー):骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤
・イグラチモド(ケアラム、コルベット):関節リウマチ治療薬
・ミコナゾール)(フロリードゲル経口用、フロリードF注、オラビ錠口腔用):抗真菌薬


併用注意
・抗てんかん薬、解熱性鎮痛剤、抗精神病薬、不整脈薬、高脂血症溶剤、消化性潰瘍薬、ステロイド、抗甲状腺薬、抗生物質等


●ヘパリンとヘパリン類似物質
アンチトロンビンIIIの活性作用により抗凝固作用を持つ


ヘパリンナトリウム(ノボ・ヘパリン)

注:1万単位/10ml、5万単位/50ml、10万単位/100ml


原則禁忌
出血している患者
血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の血液凝固障害
重篤な肝障害,腎障害のある患者


ヘパリン起因性血小板減少症(HIT:heparin-induced thrombocytopenia)



効能効果
汎発性血管内血液凝固症候群の治療
血液透析・人工心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止
血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止
輸血及び血液検査の際の血液凝固の防止
血栓塞栓症の治療及び予防


用法用量
1,2000~20,000単位/日を持続投与。静注後6~8時間毎に採血。APTTが1.5~2.5倍になるよう調節する。


過剰投与の際はプロタミン硫酸塩(100mg/10mL)で中和。ヘパリン1000単位あたり10~15mg。


本剤投与後にヘパリン起因性血小板減少症(HIT:heparin-induced thrombocytopenia)があらわれることがある。HITはヘパリン−血小板第4因子複合体に対する自己抗体(HIT抗体)の出現による免疫学的機序を介した病態であり、血小板減少と重篤な血栓症(脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等)を伴うことが知られている。本剤投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少や血栓症を疑わせる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。投与後10日前後で起きやすい。治療には抗トロンビン薬ノバスタンを使用する。

ヘパリン起因性血小板減少症


●直接トロンビン阻害薬(NOAC)
トロンビンの競合阻害作用を持ち、フィブリノゲンのフィブリンへの転換を抑制する。
ワルファリンのような定期的効果判定の必要がないが、大出血が発生した際にワルファリンの効果を打ち消す薬剤は存在するが、ダビガトランの効果を打ち消す薬剤は存在しない。ワーファリンに比べ頭蓋内出血等のイベントが少ない。


ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)

Cap:75mg、110mg


禁忌
透析患者を含む高度の腎障害のある患者(CCr30以下)
出血症状のある患者


効能効果
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制


用法用量
1回150mgを1日2回経口投与する。胃腸障害の副作用が比較的多くコップ一杯程度の水とともに副作用することがすすめられてられている。


用法用量に関連する使用上の注意
中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者では血中濃度が上昇するおそれがあるため本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。


本剤から他の抗凝固剤(注射剤)へ切り替える際には、本剤投与後12時間の間隔を空けること。
他の抗凝固剤(注射剤)から本剤へ切り替える際には、他の抗凝固剤(注射剤)の次回投与予定時間の2時間前から、あるいは持続静注(例えば、未分画ヘパリン)中止時に本剤を投与すること。
ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、PT-INRが2.0未満になれば投与可能である。


●第Xa因子阻害薬
トロンビンの活性化を促進する第Xa因子 (活性化した第X因子) を阻害する物質。補因子なしに阻害する直接阻害薬と、補因子としてアンチトロンビンIIIを必要とする間接阻害薬がある。腎障害では使用しずらい。


直接第Xa因子阻害薬(NOAC) 他:アルガトロバン
1)リバーロキサバン(イグザレルト)

錠:10mg、15mg


警告
深部静脈血栓症又は肺血栓塞栓症発症後の初期3週間の15mg1日2回投与時においては,特に出血の危険性が高まる可能性を考慮するとともに,患者の出血リスクに十分配慮し,特に,腎障害,高齢又は低体重の患者では出血の危険性が増大するおそれがあること,また,抗血小板剤を併用する患者では出血傾向が増大するおそれがあることから,これらの患者については治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ本剤を投与すること.


禁忌
出血している患者
凝固障害を伴う肝疾患の患者
中等度以上の肝障害(Child-Pugh分類B又はCに相当)
アゾール系抗真菌剤
急性細菌性心内膜炎の患者
非弁膜症性心房細動患者でCCr15ml/min以下
深部静脈血栓症でCCr30ml/min以下


効能・効果及び用法・用量
効能効果
非弁膜症性心房細動
深部静脈血栓症


用法用量
15mgを1日1回食後に経口投与する.なお,腎障害のある患者に対しては,腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する.


深部静脈血栓症
DVT,PE発症後の初期3週間は15mgを1日2回食後に経口投与し,その後は15mgを1日1回食後に経口投与する.


用法用量に関連する使用上の注意
[非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制]
CCr30〜49mL/minの患者には,10mgを1日1回投与する.
CCr15〜29mL/minの患者では,本剤投与の適否を慎重に検討した上で,投与する場合は,10mgを1日1回投与する.


注射剤の抗凝固剤(ヘパリン等)から本剤に切り替える場合,次回の静脈内又は皮下投与が予定された時間の0〜2時間前又は持続静注中止後より,本剤の投与を開始すること.
本剤からワルファリンへの切り替え時において抗凝固作用が不十分になる可能性が示唆されているので,抗凝固作用が維持されるよう注意し,PT-INR等,血液凝固能検査の値が治療域の下限を超えるまでは,ワルファリンと本剤を併用すること.なお,本剤の投与終了後24時間経過するまでは,PT-INRはワルファリンの抗凝固作用を正確に反映しない.
本剤から注射剤の抗凝固剤に切り替える場合,本剤の投与を中止し,次回の本剤投与が予定された時間に抗凝固剤の静脈内投与又は皮下投与を開始すること.




2)アピキサバン(エリキュース)

錠:2.5mg、5mg
消化管出血の頻度はNOACの中ではもっとも低い。


禁忌
出血症状のある患者
血液凝固異常及び臨床的に重要な出血リスクを有する肝疾患患者
腎不全


効能・効果及び用法・用量
効能効果
非弁膜症性心房細動患者
静脈血栓塞栓症


用法用量
非弁膜症性心房細動
1回5mgを1日2回経口投与する。
なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg1日2回投与へ減量する。次の基準の2つ以上に該当する患者は1回2.5mg1日2回経口投与する。
<80歳以上、体重60kg以下、血清クレアチニン1.5mg/dL以上>


静脈血栓塞栓症
1回10mgを1日2回、7日間経口投与した後、1回5mgを1日2回経口投与する。


3)エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ) 

錠:15mg、30mg、60mg
下肢整形術後の適応は他のNOACにはない。


禁忌 上薬とほぼ同様


効能効果
リクシアナOD錠15mg、30mg
非弁膜症性心房細動患者
静脈血栓塞栓症
下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制


リクシアナOD錠60mg
非弁膜症性心房細動患者
静脈血栓塞栓症


用法容量
Af:1日1回60mg、術後VE予防では30mg
体重60kg以下、CCr30~50mL、があれば30mgに減量。


●間接第Xa因子阻害薬
皮下投与 フォンダパリヌクス


●低分子へパリン
エノキサパリンナトリウム注射液(クレキサン)

注:2000IU
禁忌
出血している患者
急性細菌性心内膜炎患者
重度の腎障害
HITの既往歴のある患者


効能効果
下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制


用法用量
1回2000IUを、原則として12時間毎に1日2回連日皮下注射する。


原則として、術後24〜36時間に手術創等からの出血がないことを確認してから投与を開始すること。


CCr30〜50mL/minの患者に投与する場合は、なお、出血の危険性が高いと考えられる場合には、投与間隔を延長することが望ましい(2000IUを1日1回投与する)


活性化凝固時間(ACT)、プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)等の通常の凝固能検査は、本剤に対する感度が比較的低く、薬効をモニタリングする指標とはならない。


投与時
親指と人差し指で軽く皮膚をつまみ、針の全長を皮下組織へ垂直に刺すこと。注射が完了するまで皮膚を離さないこと