12誘導心電図 QRS波の異常

QRS波とは心室が収縮する時の心筋内における電気のお流れを反映している。
通常、陰性のQ、陽性のR、陰性のSから成り立つ。
型の違いにより、ふり幅の小さいもの(3mm以下)は q、r、s と表記する。



Q波
:Q波は通常、深さ4mm(0.4mV)以下、幅1mm(0.04秒以下)
:多少深くてもR波の高さの1/4未満なら正常。(aVrは除く)
:Ⅱ、ⅢaVf、V5,V6誘導にて出現。これ以外で出現すれば小さくても異常。


R波、S波
:高いR波は心室肥大を示す。深いS波は反対側の心室負荷を示す。


通常QRS幅は120ms未満 = 3mm未満 =0.12秒未満である。
正常のものをnarrow QRS、幅広いものをwide QRSという。


※移行帯
胸部誘導はV1からV6にかけて徐々にR波が高くなり、S波が小さくなる。R波とS波が同じ高さ(優位性が入れ替わる)になるところを移行帯という。ここが心室中隔の位置となり、これがずれてくると心臓が回転していると判断できる。通常移行帯はV3,V4。
右にずれると反時計方向回転といい、移行帯がV1,V2
左にずれると時計方向回転といい移行帯がV5,V6を示す。


1)右脚ブロック


・QRS幅120ms以上で完全右脚ブロック(CRBBB)
 100ms~120msで不完全右脚ブロック(IRBBB)
・V1、V2でrSR' orRR'
・Ⅰ、aVL、V5、V6で幅広S
・V1、V2で陰性T波(二次性)


通常、心室ではじめに興奮するのは中隔である(左→右)
その後に左右の心室が同時に興奮するが右室より左室のほうが強く興奮するためV1では遠ざかり(陰性)、V5、V6では近づく(陽性)波形となる


その上で右脚ブロックについて


➀心室中隔による興奮で V1でr波 V5,V6q波(左→右波形のため)
②ブロックされているため右室は興奮せず左室が興奮するためV1で深いS波
 V5,V6でR波
③左室の興奮がゆっくりと右室に流れるためV1で幅広R波 V5,V6で幅広S波



2)完全左脚ブロック


・QRS幅120ms以上
・V1、V2でQS波 or rS波
・Ⅰ、aVL、V5、V6でノッチのあるR波
・V5、V6でq波消失
・V1-V3でST上昇、V5V6で低下


左脚ブロックの場合、中隔の興奮は通常と違い(右→左)となるため
➀V1で陰性波(QorS)、V5V6で陽性波R波(q波消失)
②その後右室が興奮するためV1で陽性波、V5,V6,Ⅰで陰性波 これがノッチを形成
③その後右室の興奮が左室に伝わるためV1で陰性波、v5v6でR波となる。


左脚ブロックにおけるST-T変化について
・胸部誘導においてQRSと反対のSTが生じる